東京の街並みが朝焼けで染まり始めている中、太一はすでに目を覚ましていた。スマートフォンの画面は仕事の通知で埋まっており、彼の指はそれを片付ける速さで画面を滑っていた。プロジェクトのクライマックスが迫っており、各部門からの要望や修正要求が絶えない。
その日の夜、真理との待ち合わせがあった。太一は、仕事に追われる中でも、このデートを楽しみにしていた。だが、心の中では、真理に自分の弱さや不安を見せることなく、しっかりとした一歩を踏み出すことを誓っていた。
新宿の街灯の下、二人は静かにイタリアンの店で食事を楽しんだ。食事の途中で、太一は真理を見つめて、ちょっとしたジョークを言いながら、「終電、無理そうだから、泊まってく？」と、少し照れくさい表情で訊ねた。
「うーん、いいかも」と真理が笑顔で返すと、太一の胸のドキドキは加速した。
食後、二人は近くのコンビニに立ち寄り、ビールとチューハイ、それにちょっとしたスナックを手に入れた。太一のアパートは小さな6畳の部屋だったが、綺麗に片付けられており、何となく落ち着く空間となっていた。
部屋に入ると、太一は音楽をかけ、真理と並んで床に座った。冷たいビールの缶を開ける音、それと音楽がゆったりとした時間を作り上げた。言葉は少なかったが、その場の雰囲気は二人の距離を縮めていった。
真理の柔らかな髪が、太一の腕に触れるたび、彼の心は高鳴り続けた。間接照明の光の中、彼の手が真理の頬に触れ、彼女の瞳が太一を潤んで見つめた。二人の距離がさらに近づき、唇が触れ合う。真理との初めての夜という特別な瞬間を迎えた。
翌朝、太一の部屋は静かだったが、彼のスマートフォンは再び仕事の通知音で鳴り響き始めた。太一は、前の夜の記憶を胸に秘めつつ、新たな一日の仕事に取り組むこととなった。
